半村良「慶長太平記」伝奇時代小説/石狩市民図書館 2014年09月10日(水) 19:06:57   No.51 (読書)

2015年03月26日 03:37
 先日8/27、「エドガー賞全集 上巻」(ハヤカワ・ミステリ文庫)とアシモフ「ゴールド 黄金」(2012年に初めて図書館へ行った時から必ずチェックしているのだが、四六版と文庫版の2冊があるはずなのに、未だに会えず)の2冊が目的で三か月ぶりに石狩市民図書館へ行ったが、代わりに借りてきたのは、「エドガー賞全集 1990~2007」(ハヤカワ・ミステリ文庫) 、半村良「慶長太平記 全3巻(黄金の血脈/彷徨える黄金/黄金郷伝説)」祥伝社、瀬名秀明「新生」河出書房新社の5冊です。目的の本が見つからなかった時に、瀬名秀明編のアンソロジーであるロボットもの(「ロボット・オペラ」でした)があったことを思い出して捜したのですが、無かったので代打の代打で借りたのは、「新生」。瀬名秀明作品は「パラサイト・イヴ」「BRAIN VALLEY」が面白かったのですけど、第三作「八月の博物館」がそうでも無かったので、瀬名秀明作品とは疎遠になっていました。
 まず「エドガー賞全集 1990~2007」の拾い読み、凄い傑作があったので、これについては全編読了後に別途書きます。


 そして読み始めたのは長編「慶長太平記」全3巻でした。この本は7/19にブック・オフで見たのだが後ろ2冊だったことと、大久保長安ものは数点あり、はたして読んだ本かどうかがはっきりしなかったので、これは図書館で借りようと思った本です。今アマゾンの検索で表紙画像を確認したら、文藝春秋版第1巻(1978)は記憶にあるので、当時第1巻のみを読み、1997~1998年に祥伝社で全3巻として完結した時には、既に読んだ本だと誤認していたのかも知れない。もう結構昔のことなので記憶も曖昧でごっちゃですから。

 「慶長太平記」の出だしでもう嵌っておりました(文藝春秋版第1巻1978のことは何も憶えていない)。鈴波村が舞台の始めの章での主登場人物は、登場順にまず南蛮船への狼煙痕を探索している謎の武士、そして10年ぶりに実家に戻っていた主人公・友吉(鈴波友右衛門)、怪しい謎の武士をつけた友吉は見つかってしまい"太閤の大法馬(大判金千枚分の金)"について詰問を受けている時に現れたるは……霧隠才蔵と猿飛佐助で、謎の武士(服部半蔵とここで判明)から友右衛門を救う。登場人物の名のみを連ねるつもりがストーリーの紹介までしてしまったけど、掴みはOKの豪華な第一章。

 時は関ケ原合戦の後の話(現代から見ると大坂冬の陣の前の1610年か)、真田幸村の密命(出雲のお国の一子、織田家の血を引く八歳の名古屋三四郎を連れて旅をし会津蒲生家へ無事に届けること)を帯びることになる主人公は牢人・鈴波友右衛門(半農半漁の貧村生まれの友吉、17歳のときに飛び出し関ヶ原合戦で敗走、それから十年が経った)。まずは二人で堺を船でたち一路、安房国(今の千葉県安房郡鋸南町か)里見家へ。ここから道連れとなるのが、大久保長安ゆかりの謎の女・野笛。ますます面白くなりそう。大久保長安、真田幸村、今井宗薫らの描く絵図と徳川家康らの絵図かがっぷり四つで物語は展開していきます。

 終わりが近く第3巻の残りページも薄くなったところで、霧隠才蔵から友右衛門に下された命は奥州へ行けというもの、"あれっ?冬の陣はどうなるの?"と思っていたら、予想していなかった最終章が待ち受けていて結構感動的なラストとなり、堪能いたしました。これぞ半村良の伝奇小説の世界です、久々の半村良ワールドです。

 ただ少し不満を言うならば、越後高田藩主・松平忠輝(家康の六男)をもちょと読みたかったということ。あの隆慶一郎「捨て童子・松平忠輝」がありますから、半村良の松平忠輝をもっと……今回はちょい出の脇役だからこんなもんか、でも残念。他の大久保長安ものでたっぷり出ていたかも、でも何も記憶無し。


 次に読んだ瀬名秀明「新生」はスゴイ作品だと感じたのだが、もう少し理解度を進めるするには、せめて小松左京「虚無回廊」(むかし第2巻までは読んだと思うのだが第3巻は読んでいないはず)を一気(図書館に未完の全3巻有り)を再読してから、「新生」をもう一度熟読することとし、「新生」の感想記事はそれからということにします。